カテゴリー「行政処分」の6件の記事

2012年4月 5日 (木)

違反点数の抹消上申、まとめて107件って!

120405 現在発売中の『ドライバー』で、警視庁の「抹消上申」のことを書かせてもらってる。抹消上申とは、交通取締りを行った所属(署や隊)から、交通部長(運転免許本部)に対し、理由を示して、交通関係法令違反点数の抹消を上申する文書だ。
 非常に興味深い文書で、かつ大量にゲットしてしまったので、半分に分けて次号(4月20日発売号)でも取り上げる。
 いま、そのための後半部分の読み込みを進めてる最中なのだが、なんと107件まとめて抹消上申というのがあったsign01 ん? そういえば…。
 以下は2011年11月26日付け朝日新聞、の一部。

右折禁止標識2カ所、誤認取り締まり116件 警視庁
 警視庁は25日、一昨年12月~今年10月に東京都内の交差点2カ所で右折禁止の交通標識をめぐり計116件の誤認取り締まりをしたと発表した。うち4件で運転免許の取り消しや停止の処分につながったという。同庁は対象者に謝罪して違反点数を取り消し、反則金を還付する。また、通行方向を限定する標識の設置場所約5万2千カ所について点検を進めている。
 警視庁交通部によると、今年6~10月、板橋区前野町4丁目の交差点を右折した車両について、志村署が道路交通法の通行禁止違反で107件を誤って取り締まった。交差点の入り口に設置された右折禁止標識は、並行する2本の道路のうち手前の道路への右折だけを規制するものだったが、署員が奥の道路も右折禁止と間違えたためという。

 志村署の交通課長から志村署長への報告によれば、その右折禁止の規制について、あることから、ある巡査長が交通規制係の巡査部長に確認したところ、規制の効力は交差点全体に及ぶと回答があったことから、巡査長は取締りを開始、しかし違反者から「申出」があり、本庁の交通部交通規制課に確認したところ、規制が及ぶのは交差点手前の一方通行路に対してのみと「判断された」…。

 そのほかにも、「違反不成立」が多くて多くて。しかも、外部からは想像もつかない、いろんなケースがあるんだね。「氏名詐称」事案で、ぎょっとなるのがあったし。交通取締りも、ああ見えてなかなか大変なんですね~と。
 こういうのが雑誌記事になるのは本邦初だと思う。だって、こんな文書を大金かけて入手し、マニアックに興奮するのは私だけだろうから。ひーん。shock

追記: 本邦初じゃないです。『ドライバー』2009年3月号で1回やってました。『改訂新版 なんでこれが交通違反なの!?』のQuestion114にも書きました~。crying

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2010年12月31日 (金)

蓮舫さ~ん、警察庁はナメきってますよ~

 フリージャーナリストの西島博之さん、週プレで交通利権のことをよく書いてる人だ。その西島さんが、じつは爆笑スクープネタを掴んでて、11月に一杯やりながらその話を聞いたとき、私はマジ笑い転げた。きゃぁ~、も、最高っsign03

P1020529  運転免許の更新時講習の教本として配布される(ただし代金は講習手数料に含まれてる)あの『交通の教則』、あれが2010年5月の事業仕分けでネタになったでしょ。
 あのとき警察庁は、もはや全安協(全日本交通安全協会)の独占ではない、入札を取り入れ、すでに全安協以外の教本を使ってる自治体が複数あると、素敵な蓮舫さん(白いスーツがよく似合って、ああいう中では飛び抜けて美人だょ)に対し堂々と言っていた。

P1030959  全安協以外…。どこだ? 地元の元警察官僚がやってる会社か? 地方紙の子会社とすれば、新たに警察から天下りを受け入れ、ますます…。いろいろ想像するよね。
 だって、『交通の教則』は実質、天下り利権のためにあるということができ、一般の業者が参入しちゃったら、『交通の教則』の存在意義、つか免許更新の意義自体、大いに失われてしまうもの。

 じゃあ、「全安協以外」ってどこなの。そこが、西島さんのスクープなのである。私がマジ笑い転げたのは、そこなのである。
 すぐにも「今井亮一の裁判傍聴バカ一代」(月105円)や雑誌に書きたかったが、やっぱ仁義ってもんがある。西島さんより先に出しちゃうわけにはイカナイ。ぐっとガマンの日々…。

 ようやく西島さんが「THE INCIDENTS インシデンツ」で発表してくれた。「事業仕分けもなんのその、警察庁の『交通の教則』利権は不死身」、上、中、下、であるsign03
 蓮舫さ~ん、警察庁はナメきってますよ~。bleah

 記事の全文を読むにはユーザ登録をしなきゃならないけど、「正式オープン準備版」だからか、登録なしでもけっこう読めるようになってる。

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2008年2月19日 (火)

行政不服審査の「刷新」をなぜ言いだしたのか

 ワタシ的には「おお~っ!」というニュースが、2月8日付け朝日新聞に。
 以下はその一部。

ずさんな行政不服審査、刷新 今国会に法改正案
 総務省は、国や自治体の処分に対し、国民が不服を申し立てる行政不服審査制度を大幅に改める方針を固めた。行政処分に関与した職員が審理にあたったり、20年以上も裁決しなかったりするなど、公正・迅速と言い難いケースがみられるためだ。同省は処分にかかわっていない職員に審理を担当させ、第三者機関への諮問手続きの導入を柱とする行政不服審査法改正案を今国会に提出し、成立から2年後をめどに新制度を導入したい考えだ。1962年の施行以来初の全面改正となる。
 行政不服審査は訴訟より手続きが簡素なメリットがある半面、公正さや客観性、迅速さに欠ける問題点が指摘されてきた。総務省の調査では、国の機関に対する申し立てのうち05年度に裁決や決定を出したのは約1万6700件。このうち申立人の主張が認められたのは約2500件にとどまり、裁決・決定までに1年を超えたものが約2300件もあった。原子力安全・保安院が原発工事などに関する81年の申し立てにいまだに裁決を出さないなど、事実上たなざらしにされる例もある。
 現在2種類ある申し立てのうち、審査請求では反論書の提出など申立人の主張をより詳しく聞き取る手続きが定められているが、異議申し立てではこうした手続きが規定されておらず、不公平で分かりにくいとの指摘があった。改正案では二つの手続きを一本化して「審査請求」とし、これらの手続きを整備する。

070805  行政不服審査法に基づく「不服申立」には、「審査請求」と「異議申立」の2種類があった。処分庁と審査庁との関係によって、どっちか決まるわけだが、それを「一本化」するのは良いと思うし、実現できるだろう。

 しかし、公正・迅速化となると、なにをいまさら? ほんとの狙いはどこにあるの? という気がする。

 運転免許の行政処分、および駐禁レッカー(の手数料の督促処分?)についての不服申立を長く見続けてきた私からすれば、不服申立の手続きを設けておくことの意味は、
「処分を執行する前にアンタの言い分を聞く必要はない。事後救済の手続きが設けられてるんで、不服があるなら、処分を受けてから申し立てなさい」
 と一方的に処分を執行するため、そして、
「一方的に処分するわけじゃない。あとでちゃんと審査するようになってるんですよ」
 という体裁をつくるためのはず。
 その基本をひっくり返すようなことを、行政側が自発的にするはずがない。
 いや、べつに、良いとか悪いとかじゃなくて、行政とはそういうもんでしょ。行政機関は必要だけれど、民と行政とは利害が対立する関係にあるので、行政が民を害しないよう、行政の良い部分だけを引き出すよう、民が不断の努力をしていく、そういうもんでしょ。

 この「刷新」は、「裁判の迅速化に関する法律」との兼ね合いもあり、原則2年以内に裁決するよと決め、とりあえず公正らしさもアピールしとこう、そういう話じゃないのかな。
 「第三者機関への諮問手続きの導入」なんて、ニュースになるような話題の処分についてだけ、1年に(または10年に?)1件やる程度で終わるんじゃないかな。

 あと、マニア的に憶測するなら、今後、行政処分を飛躍的に増やす予定があるので、簡易・迅速に処理できる手続きを(公正らしさを装って)設けておく、つーことなんじゃないかな。
 被処分者の言い分を聞かずに処分を執行してしまえる(つまり、被疑者の言い分を聞かずに刑罰を科してしまう、に相当する)のは、行政側にとって非常に便利だ。
    犯罪 → 非犯罪化
    刑罰 → 行政罰
    罰金 → 行政制裁金(現在の「放置違反金」はそれに近い)
 という形で、とうとう、道路交通法違反および自動車運転過失致死傷を非犯罪化する…そっち方面へゴゴゴと動いてることは確かだろう、と私には思える。

※ 画像は、警察庁で開示を受けたもの。これでもこの年は「審理中の事件数」がだいぶ少ないんだよね。

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2008年1月15日 (火)

運転免許の行政処分取消請求訴訟

 これで丸々2週間以上、霞が関の裁判所へ行ってない。
 警視庁へも警察庁へも行ってない。年賀のご挨拶に? 来るなよぉって? いやん。
 原稿書いて寝て起きて原稿書いて…ものすご~く体に悪い日々かもしれない。
 しっかし丸々2週間以上も、こんなことやってるとは、信じられないっ。
 でもでも! 3月発行予定の今回の本(新書)は、面白いぞ~。びっくりするよ!

 1月14日付け読売新聞に、珍しい記事。
 これについてだけちらっとコメントしとくです。

「私はゴールド免許のはず」と県公安委を提訴
富山市の男性

 スピード違反で起訴猶予処分になった富山市内の男性(51)が、その後の運転免許証更新で、無事故・無違反のドライバーだけが持てる「ゴールド免許」ではなく、一般的な免許が交付されたとして、県公安委員会を相手取り、取り消しを求める行政訴訟を起こしていたことが13日、分かった。第1回口頭弁論は2月6日に行われる。
 訴状などによると、男性は2003年4月、同市内の市道(時速40キロ制限)を乗用車で運転中、26キロ超過したとし、道路交通法違反の疑いで検挙された。だが、男性は、「違反はなかった」として、反則金納付を拒否。04年、富山区検は男性を起訴猶予処分にした。
 無事故・無違反が5年以上の「優良運転者」には、免許の有効期間が金色で表記されるゴールド免許が発行されるが、男性が07年に更新手続きを行った際に交付されたのは、青色の「一般運転者」の免許だった。
 男性は07年4月、講習や保険で優遇されないなどとして、県公安委員会に異議申し立てを行ったが、「速度違反で一般運転者となったことは法に基づく適正な処分」として、同7月に棄却。これを受けて同12月、富山地裁に提訴した。

 どこが珍しいかって、こういうことはごく普通にときどきある、と私は認識しているのだが、読売の記者氏は、なぜここまで長く書いて社に出し、なぜ社はこの(新聞記事にしては)長いのをアップしたのか。
 自身もこれに近い経験があり、腹が立っていたので、「よっしゃ!」と思って記事にした(アップした)んだろうか。
 いや、悪いというわけではぜんぜんなくて、
「お~、こういう訴訟もできるのか。やる人もいるのか」
 と広く報せるのは、良いことと思う。
 記事の内容については、交通違反関係の新聞記事にしては珍しく(って偉そうにゴメンね)わかりやくて、とくにひっかかるところはない。頭のいい記者なんだろうか。

 この訴訟がストレートにすすめばどうなるか、というと、取締りの警察官を証人として呼んで、「取締りは適正・妥当に行なわれた。26キロ超過の事実はたしかにあった」と証言させ、それをぜんぶ鵜呑みにし(どっちもどっちなら裁判所はかならず警察官の言い分に肯く。9割方警察のほうが怪しくても、残り1割を拾って警察に軍配を上げるのが普通の裁判官といえるだろう)、よって、点数を登録したことも、その登録点数にしたがって一般運転者講習の対象としたことも、法令に基づく適正な処分であり、免許証の帯部分の色を青としたことにも何ら違法はない、損害保険の掛け金の問題は、県(公安委員会)の与(あずか)り知らぬことである、刑事処分とは行政処分とはその目的も手続きも異なるうえ、検察官が起訴を猶予したことをもって行政処分を免れようとするのは、まったく失当である、とまぁそんなふうになるだろう。
 ストレートにすすめばそんなふうになることを見越して、先回りして先回りして相手の主張・立証をぜんぶ崩していく、そういうやり方が大事と思う。
 ま、そんな簡単に崩せるもんじゃないけども、いつものように普通にストレートに負けるよりは、少し工夫して新しいことをやるほうが、あとにつながるんじゃないか、と。

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2007年8月 5日 (日)

幻系の焼酎「深海うなぎ」を…

 たいへんなことを、しでかしてしまった!
 近所の酒屋へ、急ぎ発泡酒を買いに行ったわけ。
 3本、冷蔵ケースから出し、ふり返りながらレジへ。
 そのとき、台の上に展示されてた焼酎(一升瓶)を2本、倒してしまった。
 大きく倒れた1本は割れず、あ~良かったと安堵…してたらもう1本が、ゆら~りと…。
 がしゃんとか、ぱしゃんとか、そんな音がしたっけ。
 旨そうな香りが店内に広がった…。
 割れたのは、「深海うなぎ」。
 聞いたことない。幻系だという。
 酒屋のお兄ちゃんは、「いーですよ」と言いながら、ちょっと引きつってたような…。

 車の任意保険の特約で、そういうのは賠償できるのかな、と思うけど、それですむもんじゃない。幻系なのだから。
「申し訳ないから、ここは、残る1本を買わなきゃマズイだろ」
「…そうね」
 と女房殿の許可を得て、買いました、普段絶対買わないだろう高い焼酎を。←こうやって女を騙して酒にありつくのか、お前は。

 飲みました。
 まずは味見に、室温で、生(き)で。
 ま~、驚いた! 旨いなんてもんじゃないね!
 これが焼酎か! 俺が今まで飲んでたのは、何だったんだ! つー感じ。
 これは、湯で割ったり、冷やしたり、氷を入れたりしちゃダメだろ。
 こうやって書きながら、ヨダレがわいてくるよ。

 こいつ、きっと言うぞ、女房殿に。
「1本だけでは到底、償いにならない。これからときどき、幻系を買うよ、あの店で」

070805  気分がいいので、お宝画像を。
 最新の「行政不服申立事件調」。
 警察庁の文書、つまり全国のデータだ。
 この年から、「放置違反金納付命令」が登場した。
 少ない? いや、これは、「弁明」の結果に不服で、行政不服審査法にもとづく手続きをとったものだ。

 手元に、平成3年(1991年)からの同じ表があるんだが、まぁ、隔世の感というか、かつては事件数が少なかった。
 不服があれば不服申立の手続きを利用する人、つまり不服があったことをデータに残していく人は、全体の割合からすればごく一部とはいえ、確実に増えてるんだねぇ。

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裁判員制度はいらない!大運動   

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2006年11月27日 (月)

運転免許の行政処分とは

 11月27日付け朝日新聞の社会面トップに、
<<抜け穴で運転可能 免許取り消し処分 出頭拒めば 更新時まで「野放し」 NO飲酒運転 任意の「壁」 5年放置も>>
 という大見出し、小見出しの大きな記事が。
 ネットでは、 
<<免許取り消し、出頭拒めば「運転可能」 道交法に抜け穴>>
 として掲げられている。

 盗難車を飲酒運転してひき逃げした男(当時30歳)が、業務上過失致死(被害者は当時25歳。合掌)と、道路交通法の措置義務違反(ひき逃げ)と無免許で公判請求されたが、免許は有効だったと公判でわかり、検察は無免許について起訴を取り下げた。男は点数累積で免取り処分の基準に達しながら、処分を受けていないことがわかった…。
 という趣旨の事実関係が報じられている。

 こういう事件では、運転免許の照会結果が必ず書証として提出される。
 内容を確認せずに起訴したとすれば、あまりにずさん。
 …とはいえ、2ちゃんねるなどでは、
  ・点数が処分の基準に達した
  ・「意見の聴取」の手続きを経るなどして処分の量定が決まった
  ・処分が執行された
 この3つをまったく区別せず、「免取ケテーイ」とだけ騒ぐ傾向が見られる。
 「男」はその調子で「免取り食らいました」とか供述し、検察官もそれにのってしまったのだろうか。

 読者は、この記事を読んでどう感じるのだろう。
 私は、道路交通法違反を中心に500件以上の裁判を傍聴してきた。
 傍聴人の立場で偉そうに言わせてもらえば、「反社会性人格障害」とまではいかないまでも、犯罪に対するハードルが非常に低い人たちが、社会には間違いなく居るのだ、と痛感される。
 そういう人たちは、やったら必ず捕まるとは考えずに、ハードルを越える。
 どっちかといえば、「盗めるのに盗まないのは損だ」という意識のようにも思える。

 そして交通違反は、多くの善良な人々が日常的にハードルを越えているといえる。
 道路交通法は、きわめつけのザル法だ。
 元内閣法制局長官の言葉(←リンク先の下のほう)を、しみじみ味わってほしい。
 越えてもべつに何ともない、みんなが日常的に越えているハードルのなかに、越えてはならない、越えると非常にやばいハードルが、紛れている、そういう状況というべきだろう。

 そんななかで、運転免許の行政処分は、どう運用されているのか。
 以下は、2003年の暮れに『ドライバー』へ送信した原稿だ。若干、加除訂正した。  

 11月28日、桜田門の警視庁ビルへ「意見の聴取」を傍聴に行ってきた。
 「意見の聴取」とは、90日以上の免停および取り消し処分の基準に達した者(以下「処分者」という)に与えられる弁明の機会。かつて「聴聞」と呼ばれていたものだ。

 道路交通法104条では「公開」とされている。
 しかし傍聴する人は皆無ではないだろうか。
 私は10年ほど前、ある取り消し処分者といっしょに行ったことがあるが、
「傍聴はできない。補佐人としてなら入れてやる」
「何を言ってるんだ。法律には公開と明記されてるじゃないか」
 とさんざんモメたことがある。
 けれども最近、事故被害者・遺族が加害者への処罰・処分にまったくタッチできないことが社会問題となり、今回、ある遺族の方とその関係者が「意見の聴取」を傍聴することになったというので私も同行させてもらったのだ。

 聴取は30人ほどずつ3つの小部屋に分かれて行われた。
 私が入ったのは3番目の部屋。
 3~4人掛けの長イスが11脚、奥に向かって3列に並べられ、正面の長机に、こちらを向いて聴聞官(公安委員会から聴取を委任された警察官)が着席。横の別の長机にいる事務方が、
「平成×年×月×日、××付近道路において無免許で自動二輪車を運転。処分歴なし。本件19点」
 などと読み上げ、処分者は1人ずつ立って聴聞官の前の席(裁判の法廷でいえば証言席)に座り、いくつか簡単に質問されて弁明する、という手順だった。

 その日は金曜日。取り消し処分者ばかり集められ〝魔の金曜日〟と呼ばれる日だ。
 処分の前歴が0回だと15点、1回だと10点、2回なら5点で取り消しの基準に達する。
 前歴1回で酒気帯び0.25mg以上(13点)、前歴は0回だけども駐車違反などの点数が累積されて15点を超えた、という人が多かった。死亡事故でイッパツ15点の人もいた。

 ここでの弁明により180日免停に処分が軽減されることもある。講習を受ければ100日の停止ですむ。運転者にとっては取り消し処分とは大違いのはず。だが、
「何か弁明することはありますか」
「ありません……」
 という人が大半だった。
 1人が長イスから立って聴聞官の前に座り、元の席に戻るまで平均2分ほど。
「通知があったんでとりあえず来た」
「おとなしくしてれば懇切に情状を聞き出してくれ、処分を軽減してくれるのかな」
 という人がほとんどのように見えた。
 全員について終わると、聴聞官は退席。1時間ほどして各自に処分書が交付される(「意見の聴取」を経て決定された処分が執行される)ことになる。

 あとで、別の部屋で傍聴していた遺族の方から少し話を聞いた。
 加害者は取り消し処分を執行されたという。
 けれど、いったいどういうシステムなのかよくわからず、気持ちが晴れることは少しもなかったようだ。何より、処分執行まで加害者が運転できていたことに驚きを感じたようだった。

 私は「不起訴なのになぜ処分を強要されるんだ!?」といった人たちに向け、行政処分のことをずいぶん書いてきた。
 だが今回、そうじゃない一般の人、事故被害者・遺族の方々向けに、概要と問題点をわかりやすくまとめておく必要があるなと痛感した。「不起訴なのに…」という人たちにも、別の角度から改めてながめてみることは有意義だろう。

 行政処分は少なくとも4つの観点から見るべきと思う。

①処分の目的
 行政処分は、罰や制裁の類ではない。そっちは反則金や罰金などが担当する。
 行政処分とは、
「危険性の高い運転者を道路交通の場から排除することにより、将来における道路交通上の危険を防止することを目的とする」(警察庁交通局運転免許課長。東京法令『月刊交通』03年9月号)
 行政行為なのである。
 たとえば酒酔い運転は、事故を起こさなくても運転しただけで25点。
 死亡事故は運転者の過失が大きくても20点。事故点数は必ず違反点数に付されるので、一時不停止(2点)が原因なら22点ということになる。
 前歴0回なら22点は欠格期間1年の免許取り消し。
 25点は欠格期間2年だ。
 愛する家族を殺された者からすれば、
「人を殺して1年か。重く処罰されるべきはどっちなんだ!」
 と、到底納得できないだろう。
 しかし、人間にありがちな不注意(違反)が原因で事故を起こし、その結果が重大だったという人と、酒に酔った状態で故意にハンドルを握ってしまう人とでは、後者のほうが「将来の危険性」は高い。行政処分はそういう考え方に立つ制度なのである。

②全国一律の不公平
 同じ一時不停止でも、田んぼの真ん中の交差点で数百m先まで安全を確認して徐行で通過するのと、見通しが悪く通行量の多い交差点へかなりのスピードで突っ込むのとでは、危険性はまったく違う。
 ところが点数は違反名に付されるため、どっちも同じ2点だ。
 また、違反は日常的にあふれており、取り締まりを受けるのはそのごくごく一部でしかない。
 運よく、いやとくに運が悪くなくて捕まらなければ、どれだけ違反しても「無違反」の「優良運転者」とされる。
 さらには、無実の容疑で取締りを受け、晴れて不起訴になっても、警察は、
「取り締まりが行われた以上、違反は事実。検察の判断は関係ない」
 と行政処分を強要する。
 全国一律の点数をつけるのは「公平」だと警察は言うが、それは不公平・不公正を全国一律に押しつけるのが公平だということではないのか。

③処分執行までの期間
「不起訴になった。処分は撤回してくれ」
 と言う運転者を、警察はいつも、
「処分を受けてから裁判でも何でもやりなさい」
 と追い返す。
「危険性の高い運転者を排除するという目的からして、処分は迅速に執行されなければならない。処分が間違っていれば事後に救済するようになっている」
 と警察は言う。
 ところが、今回傍聴した「意見の聴取」では、大半の処分者の違反日が6月20日、21日、22日だった。
 免許を取り消さねばならないほど危険性が高い運転者への処分を、5カ月以上もたって行う?
 取り締まりから数日で点数は警察のコンピューターに入力され、処分の基準に達すればすぐにわかる。なのに「意見の聴取」の通知が運転者に届くのは早くても1カ月以上後になることが多い。
 「意見の聴取」の手続きがない30日、60日の免停処分も、早くても約20日後だ。
 事故の場合、過失の大きさや被害者の傷害の程度がわかるまで日数がかかることもあるだろうが、右の1カ月とか20日かとかいうのは違反についての話なのだ。
 「処分は迅速に」という警察の言い分は、不適切(かもしれない)処分を強要するための方便として出てくるだけ。処分は目的を見失っているというほかない。

④錬金術
 「危険性を改善する」ためにと、講習が用意され、受講すれば停止期間が大幅に短縮される。
 02年に30日免停を受けた人の87・45%(58万238人)、60日免停では70・46%(10万9337人)、90日以上では76・19%(9万4971人)が、その講習を受講している。
 講習料金はそれぞれ1万3800円、2万3000円、2万7600円。これに上記人数を掛けると、合計約131億円。
 この講習は、警察の天下り法人・交通安全協会に委託されている。
 実際の効果がどうだろうと、莫大なカネが確実に安協に流れ込む仕掛けになっているのだ。

 人間に不注意や不心得がつきものである以上、事故は必ず起こる。
 自らの行政行為が天下りの利益に直結している組織に、取り締まりや処分を行わせて違反・事故をなくそうとするのは、発想からして間違っているのではないかと私は思う。

 ほか、行政処分については『なんでこれが交通違反なの!?―警察は教えない126の基礎知識』に詳しく書いた。
 結局のところ行政処分は、警察が取締りを行った事実をもとに、警察が点数をつけ、警察が処分を執行し、生じたカネを警察の天下り先が独占するシステム、警察の独断、独善、利益独占のシステムといえる。
「悪い奴らをやっつけろ!」
 で制度をいじくっても、独善、独断、利益独占が強まるだけ、簡単にハードルを越える者たちへの効果は薄い、と私には思えるのだが。

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