フォト
2024年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ

カテゴリー「裁判傍聴のための用語解説」の19件の記事

2024年6月15日 (土)

無期懲役にも未決算入はある

 報道タブーその1 刑事裁判の被告人は「被告」じゃない

 報道タブーその2 罰金判決で裁判官は必ず「換刑処分」も言い渡す

 はい、というわけでですね、今回はその3、未決算入についてです。

 

 逮捕され、判決までずっと勾留されている、ということがよくある。保釈されたけども保釈までの勾留が長かった、ということもある。
 そんな場合、判決は通常、たとえばこう言い渡される。

 

裁判官 「主文。被告人を懲役1年2月(にげつ)に処する。未決勾留日数中20日(にじゅうにち)をその刑に算入する」

 

 一審判決の場合、だいたい2カ月間は裁判に必要な期間ととらえ、それ以上の勾留分を刑期から引く、という扱いのようだ。

 長く争って長く勾留され、未決算入により懲役刑がチャラになる、もう服役を終えた扱いにする、ということもある。
 
 控訴審における未決勾留日数は、原判決破棄の場合や、検察控訴だった場合、全部算入(法定算入)となる。

 懲役の実刑判決を受け、量刑不当で控訴し、さらに100万円とか被害弁償し、しかし「原判決を破棄するまでには至らない」として控訴棄却、裁判長がこう述べることがある。

裁判長 「被害弁償の分は、未決算入を多めにとることで考慮しましたから」

 

 無期懲役でも未決算入はある。
 2016年1月に東京地裁立川支部で無期懲役の判決が言い渡された住居侵入、強姦、強姦致傷、強盗致傷、逮捕監禁、住居侵入(変更後の訴因 邸宅侵入)」、これ、未決算入は900日だった。

 「強姦致傷、強盗致傷」の部分が裁判員裁判対象事件であり、素人裁判員の負担をできる限り軽くするため、公開法廷での裁判が始まる前に必ず、密室で公判前整理手続きを重ね、主張も立証も削り整える。
 この事件の公判前整理手続きは、5年ほどかかったという。

 

 ただ、昔東京高裁の部総括判事氏から雑談として聞いたところによれば、本当に死刑に近い無期懲役判決の場合、未決算入をしないこともあるという。

 

 未決算入も報道タブーだ。
 なぜ?
 大手の報道業者さんが相手にする視聴者、読者は、傍聴マニアでは全くない。
 刑事と民事の区別がつかなくても、換刑や未決算入なんぞ知らなくても、ぜんぜん問題なく生活できる。

 そんな視聴者、読者に対し、めんどくさいことを伝えなくていい。伝えれば、視聴者、読者は離れることはあっても、視聴率や部数が増えることは絶対ない、そういう判断なのかなと私は想像する。
 その判断はたぶん正しいと思う。

 

 一方、私の場合、なんちぅか、マイナー街道、裏街道、隙間物書き、ニッチ物書き、よくいえば分業だ(笑)。
 これでそこそこ成り立ってる。ありがたいことです。  

 ←6日15日4時20分現在、週間INが70で2位。

2024年6月13日 (木)

罰金判決で裁判官は必ず「換刑処分」も言い渡す

 「被告人と被告」に続いて、刑事裁判に係るメディアタブーのコーナーです。

 

 罰金刑はこう言い渡される。

裁判官 「主文。被告人を罰金×万円に処する。その罰金を完納できないときは金×円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する」


 「その罰金を…」からの部分、聞いたことがない?
 いいえ、ぜーったい聞いてます!
 以下は刑法第18条、その第4項をよく見てください。 

 

(労役場留置)
第十八条 罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
 科料を完納することができない者は、一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。
 罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、三年を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、六十日を超えることができない。
 罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。
 罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
 罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)とする。

 

 罰金刑(財産刑)を執行できないとき、労役場留置(自由刑)に換えて執行する。換刑処分という。
 この換刑処分を、裁判官は、刑法第18条第4項により、言い渡さなければならないのだ。

 労役場留置は自由刑の執行であり、1日5千円の労働ではない。
 暇つぶしでしかない軽作業で、ノルマなし、土日は休みで、休みの日も労役場留置の日数としてカウントされる。
 自由を奪う期間を、1日5千円で計算するのである。

 

 罰金額が数十万円の場合、換刑は1日5千円が普通だ。まれに、1万円のこともある。

 第18条の第1項が、罰金の労役場留置は1日以上2年以下と定めている。2年を超えることはできない。
 だから、罰金額が巨額だと1日当たりの金額が大きくなる。

 けど、罰金額を2年(730日)で割るってことではないんだね。

 たとえば覚醒剤6㎏を密輸した事件は、懲役12年、罰金600万円、換刑1日1万5千円だった。割り算すると約400日だ。
 マルチ商法の脱税事件は、懲役1年2月、罰金2200万円、換刑1日15万円だった。同、150日弱だ。

 

 逆に、というか、こんな言渡しもある。

裁判官 「主文。被告人を罰金×万円に処する。未決勾留日数中その1日を金×円に換算して、その罰金額に満つるまでの分をその刑に算入する」

 

 罰金はもう払い終わったことにする、という意味だ。労役作業なんかしてないのに。

 たとえば、車上生活者が免許更新できず無免許で捕まった、なんて場合、罰金の相場は30万円、どうせ払えないし、そもそも裁判所や検察庁からの郵便が届かない、じゃあ、逮捕・勾留しといて、満つるまで算入で処理しよう、とは裁判官も検察官も書記官も言わないけども、そういうことなのだね、という裁判がときどきある。

 満つるまで算入、私の好きな言葉だ。

 

 この換刑処分、メディア報道は絶対に触れない。タブーらしい。
 タブーのあるところデマあり。
 「交通違反の罰金を拒否ったら刑務所で日給5千円の強制労働」といったデマが匿名掲示板などにある。
 デマのせいと思われる殺人事件もかつてあった。

 ←6日13日4時10分現在、週間INが80で2位。

2024年6月10日 (月)

刑事裁判の被告人は「被告」じゃない

 毎度説明を添えるのに疲れ、ここでハッキリ記しておくことに。

 

 刑事裁判は、

   検察官 vs 被告人

 民事裁判は、

    原告 vs 被告

 である。

 ところがメディアは必ず、

   刑事裁判の被告人 = 被告

 と報じる。
 書き手が正しく被告人と書いても、メディアのほうで「被告」と変更することもある。

 被告=犯罪者と、すっかり定着している。

 

裁判官 「では被告は答弁書を陳述…」
被告  「被告だと? 俺を犯罪者扱いするのかあっ!」

 民事の裁判で被告が激怒したと、いつから語り継がれているんだろう、有名な話だ。

 「被告人を被告とする、あれはなんとかならんもんですかね(笑)」と、定年退官して間もない元裁判官氏から私は言われたことがある、裁判所の1階フロアで。

 

 被告人を被告とするのは、単なる省略、短縮ではない。
 被告という語は、全く別の意味の言葉として、別にしっかりあるのだ。
 被告人を被告と報じるのは、明らかな誤りだ。誤報だ。

 

 しかし、改まる気配はまったくない。
 なんとなんと、被告人に対し「被告は…」とぽろり言っちゃう刑事裁判官もたまにいる。驚くよね。

 現時点での見込みとしては、日本が存在する限り、この誤報は永遠に続くだろう。
 世の中、そんなもんだよと私は思う。べつに絶望とかじゃない。事実を現実を、まずはありのままに見る、それが大事だと思う。

 ←6日10日21時30分現在、週間INが90で2位。雑誌2誌の締切原稿、やっと終わった。催促されたり泣きのメールを入れたり、少し痩せた。締切ダイエットだ。今夜はもう寝ます~。

2021年11月13日 (土)

司法を監視しその適正に貢献する国民としての誇りと責任感を持ち

20211113-1  「岸田首相、安倍元首相「茨城6区」応援演説に「日当5000円」でサクラ動員…公選法違反の可能性も」と11月8日付けFLASH。画像はそのスクリーンショットだ。

 「公職選挙法違反」の裁判を私は過去にけっこう傍聴している。過去に「サクラ動員」の事件もあり、やはり日当5千円だった。被告人は女性だった。
 あれはどんな事件だっけ。

 とメルマガ内を検索するうち、2012年1月5日発行の第646号に妙なものを見つけた。
 裁判傍聴人心得五則。なんだそれっ(笑)。
 ネットで検索してみた。2012年1月6日にもう私は当ブログにも載せていた。
 「駐車監視員心得五則」のパロディなんだそうだ。「隠密同心 大江戸捜査網」の影響も受けたらしい。

 あれから10年近くが過ぎ去った。ちらっと改訂版をつくってみようか。

211113 裁 判 傍 聴 人 心 得 五 則

 裁判傍聴人は、司法を監視しその適正に貢献する国民としての誇りと責任感を持ち、その使命を果たすため、

一 常に自己研鑽をし、公平公正かつ的確な傍聴の遂行に務めること。

二 規律を保持し、その任の信用を傷つけ又は不名誉となる行為をしないこと。

三 身体及び服装を清潔かつ端正にし、品位の保持に務めること。

四 静粛かつ丁寧な途中入退廷と適切な表情の作出に務めること。

五 強制わいせつなど色情裁判にばかり押し寄せ、裁判官をして「なにが司法監視だ。国民なんてこんなもんだ。うぷぷ」と言わせることのなきよう努めること。

 「静粛かつ丁寧な途中入退廷」とは、出入口ドアを派手にバッタンガッタン慣らさないとか、動くとやたらシャカシャカ鳴る衣服をシャカシャカ鳴らさない、といったことだ。
 「適切な表情」とは、検察官、裁判官が非道な言動を行なったときは、目を丸くして口を縦におっぴろげムンク氏の絵画「叫び」のような表情をすることだ。
 附則はこうだ。

附則
一 ご下命いかにても果すべし。
二 死して屍拾う者なし。死して屍拾う者なし。
三 この心得の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

 バカだね~(笑)。

 ←11月13日21時50分現在、週間INが60で2位。

2021年6月26日 (土)

被告と被告人

 刑事裁判は【検察官vs被告人】、民事裁判は【原告vs被告】だ。
 ところがテレビ、新聞は、週刊誌も、刑事の被告人を必ず「被告」と報じる。完全に定着している。

 それでだろう、あろうことか、刑事裁判で被告人に対し「じゃ被告はね、そこに座ってください」などという裁判官もたまにいる。世相に迎合すればいいってもんじゃないでしょ、と私は傍聴席で思う。

 有名なエピソードがある。民事の裁判で、裁判官から「被告は答弁書を陳述…」とか言われた被告が、めっちゃ怒ったんだという。

被告とは何だ! 私を犯罪者扱いするな!

 いつだったか私は、定年退官したばかりの元裁判官氏と裁判所内でばったりお会いし、話したことがある。
 元裁判官氏は言うのだった。

「被告人を被告という、あれはなんとかなりませんか(笑)」

 いや私に言われても。てか私も同感なのですょ。

 かくして昨日も今日も明日も、被告人は被告と報道され続ける。
 明白に誤っており弊害もあるのに、完全に定着し、改まる気配もない、そういうことって、ほかにもいろいろあるんじゃないか。人間社会ってそういうことだらけなんじゃないか。どうでしょね。

 ←6月26日23時50分現在、週間INが80で位。

2019年9月 6日 (金)

東京地裁、特殊な事件番号

 東京地裁(東京地方裁判所)の本庁は、かつて事件数がめっちゃ多く、その頃に工夫したのだろう、事件番号が特殊だ。
 事件記録符号(地裁の通常第一審は「わ」)の前に、漢字を1文字加える。以下平成でいく。

  刑法犯  平成×年刑(わ)第×号
  特別法犯 平成×年特(わ)第×号
  合議事件 平成×年合(わ)第×号



 東京地裁の立川支部も含め他の地裁の通常第一審は、私が知る限り全事件こうだ。

  全事件  平成×年(わ)第×号

 

 ところが、東京地裁の本庁でも「平成×年(わ)第×号」となっていることがある。
 それは、なんと、即決裁判手続きであることをあらわすのだ。

 


 即決裁判手続きとは、

裁判官 「検察官、弁護人、双方ご異存なければ今日判決を…では5分ほど休廷して…」

 とやるあれではない。刑事訴訟法の第5章に定められた特別な手続きだ。
 ざっくり言えば、こんなのどうせちゃちゃっと執行猶予で決まりだという事件について、被告人にもそうと認識させたうえで、あれこれ簡略化して省略して、だいたい20分かそこらでちゃちゃっと執行猶予判決まで終わらせてしまう裁判手続きだ。

 

 以上、メルマガでいちいち説明するのはめんどうだし本文が無駄に長くなるので、ここで解説した次第。
 メルマガ次号(第2303号)は韓国人男性の「出入国管理及び難民認定法違反」、これが即決裁判手続きなので。
 なんとも感動的な裁判だった。死ぬこと以外はかすり傷、ならぬ「嫌韓以外は反日だ」みたいな今の時期だが、韓国人男性と日本人女性の“地道な愛の日々”が浮かび上がり…。

2019年6月23日 (日)

新型オービスの否認裁判!

Photo_20190623194001  さいたま地裁で本邦初、超重要な速度違反裁判が進行中だ。
 メルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」で毎回レポートしている。あと少なくとも4回はレポートすることになりそう。
 そのたんびに本邦初、超重要とはどういうことか説明するのは面倒だし、記事が無駄に長くなる。
 そこで、説明はこの記事で行ない、メルマガにはURLを貼ることとした。

 ごく簡単に説明するとこういう流れになる。



1、警察庁は新型オービスを使って速度取締りの新制度をつくろうとしている。
 ※ ちなみに警察の多くの文書では「新たな速度違反自動取締装置」とされている。それじゃ長いし、また間違いなく新型なので、私は「新型オービス」と呼んでいる。ネットでは「移動式オービス」という語がすっかり定着している。固定式まで移動式と呼ばれたりする。しかし警察文書のどこにも「移動式」の3文字はなく、「移動オービス」という別種の装置がすでにある。なので私は絶対に「移動式」とは呼ばない。ネットに逆らってマイナー路線まっしぐらだ(笑)。



2、新型オービスはタテマエ的には、日本のオービスの老舗である東京航空計器(以下TKK)と、スエーデンが本社のSensys Gatso Group(以下センシス)の2社が競合する形になっている。だが、警察庁の“主流派”はあからさまにTKK推しであることが見て取れる。



3、そんな中、埼玉県北本市の国道17号線に設置されたセンシス社の固定式(SWSS。Speed Warning Safety System)により105キロ(45キロ超過)と測定され捕まった若者が否認。どうやら昨年8月、さいたま地裁で裁判が始まった。
 ※ 画像上はその固定式と同型で、岐阜県大垣市に設置されているもの。マニア氏の撮影による。センシスの固定式は現時点では埼玉と岐阜に各1台しかない。



1902022 4、センシスの新型オービスは固定式も可搬式も、いちおう測定はレーダー式だが、従来の日本のレーダー式と全く違う。おそるべき高性能だ。その分従来の立証より手間がかかるうえ、何より今後の他の裁判のリーディングケースになる本邦初の超重要裁判ゆえ、検察官は完璧2万%の有罪を勝ち取ろうと頑張っている。
 どうせ罰金7万円か8万円のたかが速度違反事件なのに、なんと途中から合議(裁判官3人)になった。



 この裁判を見逃してたまるものか! 最優先で傍聴だ! と私はさいたま地裁へ通っているわけ。通常の取材では知り得ないことがぼろぼろ出てきてもう大変っ!
 メルマガ第2228号「センシス社の新型オービス、本邦初の検察側証人尋問に大興奮!」、第2229号「センシスの新型オービス、それって軍事技術じゃないのっ?」、第2252号「センシス社の新型オービス、意外なことがいっぱい分かった!」などでレポートしてきた。

 


 以上でとりあえず説明を終え、6月21日に行なわれた証人尋問(証人はミニスカートの素敵な女性!)のレポートを第2271号に書きます。

追記: 2271号のタイトルは「センシスの新型オービス裁判、証人はミニスカートの女性で!」。その後、第2299号「新型オービスのセンシス、世界シェアは2位か3位って! 」、第2230号「センシスの新型オービス、世界を股にかける装置の信頼性」、第2316号「新型オービス、出版社がネットに写真を載せ刑訴法違反!」でレポートした。第2307号の編集後記では検察庁の“陰謀”について仮説を披露した。私はもう新型オービスに夢中であるっ。
 ←6月23日20 時20分現在、週間INが100で3位~。

2019年6月20日 (木)

「実刑確定の男」とは

 「実刑確定の男」、聞き慣れない表現だ。

 ある犯罪で逮捕・勾留され、起訴後に、あるいは検察側証人の尋問が終わってからとか、被告人は保釈されることがある。
 最近、無免許運転で逮捕・勾留され、起訴後もしばらく勾留され、保釈保証金100万円を納めて保釈された被告人がいた。 ※メルマガ第2259号「どうも不可解な無免許裁判、なんと過去に「殺人容疑」で…!」。

190619201-1  一審(簡裁または地裁)で実刑判決を受けると、保釈は直ちに取り消されて収監される。
 具体的には、判決言渡しの期日に検察の職員が原則2人傍聴席にいて、主文が実刑(執行猶予なし)だと直ちに1人が廊下へ出る。収監するので準備を、と担当部署に連絡するのだろう。そしてすぐ傍聴席に戻る。
 実刑に決まっている事件、実刑の可能性が高い事件では、被告人は大きな荷物を持って来ているのが普通だ。

 実刑判決の言渡しが終わって裁判官が閉廷を宣すると、傍聴席から2人の職員が立ち上がり、バー(傍聴席の前の柵)の中に入って保釈取消の書面手続きをする。
 弁護人は、すぐ再保釈の請求をする旨を職員や被告人に言うことがある。
 で、「じゃ行きましょうか」と職員が言い、大きな荷物を持った被告人を連れて奥のドアへ3人で去る。

 控訴審(高裁)でも、控訴棄却(実刑維持)が見込まれる場合、保釈中の被告人が大きな荷物を持って来ていることがある。
 しかし、実刑維持となっても、直ちに保釈が取り消されることはない。
 なぜ?  私は法令の根拠を調べてないが…。
 一審と違って控訴審は、被告人の出頭を要しない。出頭しない被告人はよくいる。
 出頭した被告人は直ちに保釈を取り消され、出頭しなければまだしばらく娑婆にいられる、そりゃあおかしい、ということはあるでしょ。

 控訴審判決の翌日から2週間を経過すると、その実刑判決は確定する。
 この段階で「実刑確定の男」なるものが生まれるわけだ。
 それから検察は、収監するのでどこそこへ出頭せよという郵便を保釈制限住居へ送る。なかなか出頭しない者もいるはず。
 以下は刑事訴訟法第96条第3項。

○3 保釈された者が、刑の言渡を受けその判決が確定した後、執行のため呼出を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときは、検察官の請求により、決定で保証金の全部又は一部を没取しなければならない。

 没収ではなく「没取」なのだ。BOSCHのぼっしゅだ。
 さて急ぎメルマガ次号を書かねば。
 次号は、すんげぇ控訴棄却判決をお届けする! ちら聞きする限り評判の良いあの裁判長が、あんなぼろぼろな有罪維持をなぜやったのか。落ち目の裁判員制度にこれ以上ケチをつけられない、論理則経験則等に照らしてその推認は不合理とは認められない。 ←これは控訴審判決の決まり文句ね。

※ 画像は、銀座の晩杯屋へ行く途中にあった店。最近できたはず。なんかお洒落だよねぇ。若い女性グループ、男性グループが続々と入って行った。なんだろ。

 ←6月20日9時30分現在、週間INが90で3位~。

2018年3月31日 (土)

ヤクザ、暴力団、稼業、任侠、侠客、テキ屋、博徒

 警察、検察、裁判所が「暴力団」と呼ぶものを、私は基本的に「ヤクザ」と呼ぶ。そのことについて少し。

 

 「暴力団」なんて彼ら自身が名乗るわけがない。「死ね死ね団」じゃあるまいし(笑)。
 「暴力団」とは、警察庁が言い出した政治的な“レッテル”と私は理解している。レッテルを貼って世論を善導する、官僚らしいやり方だ。虫が好かない。

 

 じゃあ、正しい名称は何なのか。
 以前、本格的な見事な刺青(和彫り)がある男性に、酒の席で尋ねたことがある、「お仕事は?」と。男性は「かぎょう」ですと答えた。
 カ行? 当時の私はマジで首をかしげた。カキクケコ、公務員? そうは見えない。無邪気な私(笑)はしつこく尋ね、「稼業」なのだと教わった。
 その後、「稼業」という表現をあちこちで聞いた。ほ~。

 

 しかし、である。警察発表の報道に「暴力団幹部…」とあるのを「稼業幹部…」と翻訳しては落ち着きが悪い。
 ならば、任侠? 侠客? テキ屋と区別して博徒? それもなぁ。
 別の機会に、親分か幹部が「自分たちはヤクザです」という趣旨のことを言っていた記憶があり、とりあえず私は「ヤクザ」と表現している次第。

 

 さてそんなことも踏まえてメルマガ「裁判傍聴バカ一代」、3月は以下の14号を発行し終えた。

 

第2081号 町内会の掲示板で葬儀の告知を見て空き巣
 葬儀の留守宅を荒らし回って逮捕と全国報道された男が「常習特殊窃盗」の被告人として法廷へ出てきた。じつは私はその男の約4年前の前刑の裁判も、約6年前の前々刑の裁判も傍聴しているのだった。最初、人生を投げたような、俺はもうどーでもいいんだ感を漂わせていた男に、その後何があったのか、何が積み重なってあふれたのか。

 

第2080号 毎度の無理ムリ否認が裁判官を歪ませる?
 パチンコ店の開店前の行列仲間、のリュックから財布を抜いた女性は、どう証拠を突きつけられても頑強に否認。有罪なら実刑確実、ゆえに無罪を主張して頑張るしかなかったのか。否認の大半はそうした無理ムリ否認に見える。裁判官の心はどう歪んでいくか、傍聴席で考えてみた。

 

第2079号 不倫トラブルの准教授を裁判官はぼろくそに
 某私立大学の准教授か、そのゼミ生だった元女子学生か、どちらかがあからさまなウソを、真実を知る相手の前で、何も知らない裁判官の前で言い続け、互いに一歩も退かない。そんなドキドキする事件のとうとう判決。裁判官は…! 

 

 以下の2号は3月27日にお知らせした

 

第2078号 87歳の万引きお婆ちゃんを家族は捨てた?
第2077号 性的虐待10年、私は殺されながら生きてきた

 

 以下の2号は3月23日にお知らせした

 

第2076号 摂食障害でクレプトマニア、まさかの判決!
第2075号 傷害致死、平手打ちで脳損傷により死亡?
第2074号 退廷命令? どうぞどうぞ望むところです

 

 以下の2号は3月15日にお知らせした。

 

第2073号 大高正二さん、裁判所の廊下から不退去罪!
第2072号 非常に珍しい「鑑定留置理由開示」を傍聴!

 

 以下の4号は3月9日にお知らせした。

 

第2071号 オービス無謬神話を崩壊させる証人尋問?
第2070号 24年間無免許の職人、裁判のお約束を知らず
第2069号 山口組系、大麻栽培の予備、黙秘します!
第2068号 外国人の「集団強姦」と「未成年者略取未遂」

 

 第2081号では、「常習特殊窃盗」とは何かってことについて、また若い女性検察官が読み間違えた(しかしすぐに訂正した)難読漢字について、編集後記で解説した。
180322 そういうことを私はやるし、未決勾留日数(懲役の刑期を超えることもある!)を重視するし、刑事の「被告人」と民事の「被告」を峻別するし、裁判員制度はあれはじつは悪質だと考えている。
 それじゃあ、メジャーには絶対なれない。もう覚悟した。私はメジャーのひとつ外側で、誰にもマネのできないことをやるのだ、やり続けているのだ。己の立ち位置が見えた。
 ただ、この立ち位置は──現在のところ──儲からない。昨年の年収は、この30年くらいで最低だったんじゃないかな。しかし、儲けには関係なく、思い定めたことをやる! 今は芸人さんでいえば下積み時代だ、うむっ。
 そんなことを、たぶん近々オンエアされるテレビ番組で話した。どの部分がどこまでオンエアになるのか、嗚呼、恥ずかしい(笑)。

 

 おっと、以上14号は、4月になるとバックナンバーの扱いとなり、1カ月分108円となります。いますぐ購読登録すれば無料で14号がどどっと初月無料で送信されるけれども、1号を読むのに5分くらいかかるはず、重いかもしれないです。

 

※ 画像について。「昭和」で満腹満足した帰り、スーパーでこの2本を買った。いずれも税抜き108円だったか。「本麒麟」は、地下鉄の車内広告で見て、なんか飲みたくなって。「頂(いただき)8」は、8%のほうがお得じゃんと、酔った勢いでいっしょに買った次第。これくらいの贅沢は勢いでやってしまえる、私はまだまだ幸せである。
 ちなみにその2本、それなりに旨かったょ。

 

 ←3月31日22時10分現在、週間INが130で2位~。

2017年12月 9日 (土)

被告人の身柄の別 ※元声優アイドルの事件

 12月7日(木)、5分前にのんびり法廷へ行くと、行列ができていた。裁判所の職員も複数人いた。簡裁のたかが侵入盗の判決なのに、なんでっ!?
 あとで分かった、「窃盗で裁判所に出廷した元アイドルが誰か画像も判明?判決の裁判日程は?」などとネットで話題になっていたのだった。ひ~。

 

 その判決を第2022号「元声優アイドル、判決が終わり廊下で…!」でレポートした。以下はその一部だ。


 んなことよりこの事件で大事なのは、被告人の勾留場所が警察留置場だったことだ。
 他の裁判所はまた違うが、東京地裁、東京簡裁で執行猶予判決を言い渡された場合、勾留場所が拘置所か留置場かで決定的に違う点がある。

  拘置所=官の車両に乗せられ、拘置所へ戻り、それから釈放される。
  留置場=直ちにその場で釈放される。留置場にある私服等を自力で取りに戻る。

 本件被告人は、言渡しが終わって傍聴人たちが去ったのち、傍聴席の後ろのドアから廊下へ出た。
 あら~、あの上下グレーのジャージと便所サンダルで電車に乗るのかぁ。
 後ろ姿を見送ろうと、私も廊下へ出た。
 するとっ…。

 そういうこともあり、メルマガで私は、被告人の身柄の別に必ず言及している。こんな具合に。

  被告人は非身柄…。
  被告人は身柄(拘置所)…。
  被告人は身柄(警察留置場)…。
171231

 それらは私独自の表現なのかもしれない。ここで少し解説しておこう。以下は、東京における基本的なあり方だ。例外的なこともある。

 

 非身柄  いわば自由な身。逮捕、勾留されたが釈放、保釈された場合と、最初っから逮捕、勾留されてない場合とがある。

 

 身柄(拘置所)  勾留中の身であり、勾留場所は拘置所。手錠と腰縄を付けられ、刑務官2人に挟まれ、奥のドアから入廷する。判決が罰金刑でも懲役刑でも、実刑でも執行猶予でも、いったん拘置所へ連れ戻される。

 

 身柄(警察留置場)  勾留中の身であり、勾留場所は警察の留置場。この場合の留置場を代用監獄という。手錠と腰縄を付けられ、警察官2人に挟まれ入廷する。東京地裁、東京簡裁では執行猶予判決の場合、その場で釈放される。被告人は、私物を取りに自力で警察署へ行くことになる。困っている被告人に地下鉄の回数券をあげたことが私はある。

 

171024 入廷した被告人の勾留場所が拘置所か留置場か、同行の2人の官の階級章や制服で分かる。

 警視庁の場合、被告人の腰に太く頑丈なベルトをがっちり巻き、そこに腰縄を取り付ける。何年か前に被疑者が腰縄を外して逃走したことがあったせいだろう。
 ベルトではなく“拘束衣”を着せ、そこに腰縄を取り付けることもある。
 どっちにしても、被告人からすれば屈辱だという。

 以上で解説は終わり。

 

 そんなことも踏まえてしまうメルマガ「裁判傍聴バカ一代 」、12月は以下の4号を発行した。


第2022号 元声優アイドル、判決が終わり廊下で…!
 ぎょっ、たかが簡裁の侵入盗なのに傍聴人の行列が! なんとネットで騒ぎになっている事件なのだった。判決の言渡しが終わると、傍聴人たちはどっと去った。執行猶予判決のためその場で自由の身となった元声優アイドルは廊下へ出て…。

第2021号 店員が外で待ち構えていたので万引き無罪
 東京オリンピックのロゴを不正使用したピンバッヂをネットで売り無罪主張の事件の判決。  プラス、お金持ち風なおばさんの「窃盗」。よその中国人と間違えて犯人にされた、自分の弁護士は「これは事件じゃないから動けない」と言い、いま法廷にいるのは自分の弁護人じゃない等々と、無限ループのように…。

第2020号 覚せい剤も速度違反も戦争もなし崩しで
 「覚醒剤捜査「違法」と認定 裁判官、被告ねぎらう一幕も」と朝日新聞報道。うわぉ、無罪か! いやそうじゃない。捜査は違法と認定しながら判決は有罪、なのに美談感がある。その不思議さについて解説。違法だけどOKというのは、スピード違反の追尾式取締りでとっくに確立されているのだという話。
 
第2019号 国民に知らせたくない国民の義務とは
 本当かどうか現金だけで80億円の資産があるという父親、の殺害を依頼したとされる息子の判決。  プラス、覚せい剤の密売人を捕まえボコボコにした「傷害、逮捕」の判決。被告人は傍聴席の母親をふり返りガッツポーズを。  編集後記は、恋愛感情由来じゃないつきまとい等を処罰する条例について。

 

 いま購読登録すると、以上4号がどどっと送信される。そして月末まであと13号が順次送信される。そこまで無料。無料だからと試し読みをすると、面白くてヤメられない仕掛けになってます。

 しかしこのメルマガ、あまり知られてないようだ。
 “ネットの人”は基本的にただの情報しか見ない傾向があるのかと。たかが月額108円でも、有料は超高いハードルだ。あと、メディアの人はこのメルマガの存在を同業者に知られたくないらしい。そんな話をぽろり聞いた。うれしいけど困るんだよね~(笑)。

 

 次号は、「強制わいせつ」、原判決破棄、逆転執行猶予にしようかと。原判決後に100万円ほど払って示談を成立させ…か? いやそうじゃないんである! たぶん私にしかできないレポートをしよう。

 

※ 画像上は、ある夜の家飲みの酒肴だ。キャベツの千切りに米酢をかけ、家人からご下賜いただいた賞味期限切れのスモークサーモン(解凍)を載せ、思いついてブロッコリを配してみた。右側は豚肉と青梗菜を炒め、思いついて卵でとじてみようとしたもの。美しくはないが、どれも旨かった~。
 画像下は、姫ゆずをグラスに絞る直前。このサイズが7個くらい100円(税無し)のところ、だいたい3個くらい絞り、焼酎甲類25度を200ccくらいだぼっと入れてちびちび飲む。旨いのですよ。

 

 ←12月9日16時00分現在、週間INが120で2位~。