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カテゴリー「裁判傍聴のための用語解説」の28件の記事

2025年10月17日 (金)

乙1号証は決まって身上調書、なぜ?

 伝説のメルマガの第603号「精液様の白色液体を路上に遺留し…」(2011年の11月に発行)の編集後記に書いたこと、少しここへ。

 

検察官 「乙1号証は被告人の身上関係です。冒頭陳述で述べたとおり…。乙2号から4号証は犯罪事実に関する被告人の供述調書で、犯行の動機、侵入の手口など…」

 とか毎度言うでしょ。
 乙1号証は必ず身上調書だ。身上関係だけなぜ独立の調書とするのか。

 

 被疑者(メディア語で「容疑者」)の供述は、変遷をくり返したり、否認から自白に転じたりする。
 法廷へは、真実を語った自白調書、だけを出せばいい。要らん書証を出すことを裁判官は喜ばない。裁判官は証拠を減らしたがっている。

 そこにおいて、身上関係と犯罪事実に関することをまとめて録取すると、身上関係の調書といっしょによけいなものを法廷に出してしまうことになる。
 そこで、身上調書は必ず別立てで録取しておく…。

 

 といったことを分かりやす~く簡潔に指導しているのが、2004年から2007年にかけて東京簡裁・刑事1室1係の公判立会(りっかい)をやっていた木村昇一検察官の『新交通事件供述調書記載例集』(立花書房)だ。

(現在の肩書きは東京地検交通部検察官副検事)

 私は東京地裁(東京高地簡裁合同庁舎)の地下の至誠堂書店で買った。

 道交法違反と自過死傷、危険運転致死傷に加え、成りすましや身代わり出頭も解説されてる。
 こっち方面のマニアには必読、って私だけですか~(泣)。

2025年10月 7日 (火)

騒乱罪、首謀者、指揮者、率先助勢者、不和随行者

 昔、「騒擾罪」という語があった。

 日比谷公園に群衆多数蝟集(いしゅう)して騒擾(そうじょう)これあり、なんて言ったんだっけ。

 

 今、騒乱罪がある。以下は刑法。

 

(騒乱)
第百六条 多衆で集合して暴行又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
 一 首謀者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。
 二 他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、六月以上七年以下の拘禁刑に処する。
 三 付和随行した者は、十万円以下の罰金に処する。

(多衆不解散)
第百七条 暴行又は脅迫をするため多衆が集合した場合において、権限のある公務員から解散の命令を三回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったときは、首謀者は三年以下の拘禁刑に処し、その他の者は十万円以下の罰金に処する。

 

 首謀者、指揮者、率先助勢者、不和随行者に分けてるのが興味深い。
 特殊詐欺罪をつくって首謀者、班長、架け子、受け子、受け出し子、見張り役、リクルート役、振込先口座調達役、などに加えて名簿提供役も、ってありかも。

 とまれ、「○○人を殺せー!」等々を叫ぶヘイトデモは、完全に騒乱罪に当たりそうに思えるけど。

 つーことで原稿に戻ります~💦

2025年9月18日 (木)

恋愛感情がからまないストーカー

 略して迷惑条例が、各都道府県にある。 ※国は法律、地方は条例

 都道府県によって名称が若干異なることがある。東京都のは「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」だ。

 

 迷惑条例違反の刑事裁判は、昔はピンクビラ貼りやダフ屋がときどきあった。 ※私は主に東京高地簡裁で傍聴
 キャバクラなどの客引きは、今もたまにある。おっパブ(おっぱいパブ)の客引きは長く見かけない。

 昔から電車内痴漢が多く、だから迷惑条例違反は傍聴人に人気だ。
 スマホの普及とともに、盗撮がどかんと増えた。

 

 そうして、迷惑条例違反に、つきまといが、たま~に登場し始めた。
 以下は東京都の迷惑条例、第5条の2、の全文だ。太字は私。

※ 「の2」に違和感を覚える方もおいでだろう。内容的に第5条に近い条項を新設するに当たり、6条としたのでは、既にある6条を7条に、押されて7条を8条に、条ずれが起こる。そこで「の」、なのだ。
 道交法はどんどん新設するんで、第108条の32の4、なんてのまであるょ。

 

(つきまとい行為等の禁止)

第五条の二 何人も、正当な理由なく、専ら、特定の者に対する妬み、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、不安を覚えさせるような行為であつて、次の各号のいずれかに掲げるもの(ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成十二年法律第八十一号)第二条第一項に規定するつきまとい等、同条第三項に規定する位置情報無承諾取得等及び同条第四項に規定するストーカー行為を除く。)を反復して行つてはならない。この場合において、第一号から第三号まで及び第四号(電子メールの送信等(ストーカー行為等の規制等に関する法律第二条第二項に規定する電子メールの送信等をいう。以下同じ。)に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等(住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所又は通常所在する場所をいう。以下この項において同じ。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限るものとする。

一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。

二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

三 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

四 連続して電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。

五 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

六 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

七 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。

八 その承諾を得ないで、その所持する位置情報記録・送信装置(当該装置の位置に係る位置情報(地理空間情報活用推進基本法(平成十九年法律第六十三号)第二条第一項第一号に規定する位置情報をいう。以下この号において同じ。)を記録し、又は送信する機能を有する装置で東京都公安委員会規則で定めるものをいう。以下この号及び次号において同じ。)(同号に規定する行為がされた位置情報記録・送信装置を含む。)により記録され、又は送信される当該位置情報記録・送信装置の位置に係る位置情報を東京都公安委員会規則で定める方法により取得すること。

九 その承諾を得ないで、その所持する物に位置情報記録・送信装置を取り付けること、位置情報記録・送信装置を取り付けた物を交付することその他その移動に伴い位置情報記録・送信装置を移動し得る状態にする行為として東京都公安委員会規則で定める行為をすること。

2 警視総監又は警察署長は、前項の規定に違反する行為により被害を受けた者又はその保護者から、当該違反行為の再発の防止を図るため、援助を受けたい旨の申出があつたときは、東京都公安委員会規則で定めるところにより、当該申出をした者に対し、必要な援助を行うことができる。

3 本条の規定の適用に当たつては、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。

(平一五条例一三七・追加、平二九条例三三・平三〇条例四七・令三条例九九・令四条例一〇五・一部改正)

 

 だから、恋愛感情(からくる怨恨等)がからまないストーカー、といえる。

 つきまとい行為等の迷惑条例違反が法廷へ出てくるのは珍しい。たまたま遭遇するたびに、私は伝説のメルマガでレポートしてきた。

 たとえば…。
 ある新聞社の記者が、取材で知り合った女性にストーカー行為をしたとされ、執行猶予付き懲役刑を受け、会社は解雇された。それを恨んで会社に無言電話をかける等した…。判決は懲役1年4月、未決70日算入。

 投資コンサルのせいで1億円の損害を受けたとつきまとい、脅迫…。判決は罰金50万円。あっ、これはメルマガ終了後の傍聴だった。

 たまにそんなものあるが、迷惑条例違反はほとんどぜんぶ痴漢と盗撮だ。

2025年9月14日 (日)

特別傍聴席とは

 私は「取置席」なんて呼んだりするが、正しくは「特別傍聴席」のようだ。

 2012年3月14日の「裁判員制度に関する検討会(第9回)議事録」にこう出てくる。

 被害者の方が 傍聴したいというときには 特別傍聴席というものを用意して,被害者の傍聴ができるように,席の関係はありますけれども,通常,被害者の数はそんなに多くないですから,必ず確保しているようにはいたしておりますし,傍聴席で一般の方からの視線がどうしても気になるという場合には遮蔽ということで,周りの方から見えないような措置も採っております。

 

 以下、東京地裁の“非裁判員裁判”で見てきた限りでは…。

 この特別傍聴席を、検察官はよく取る。しかし、最初から最後まで空席のことが多い。かなり多い。
 「もし傍聴されるならどうぞ。席を取っておきますので」という感じで取っているのだろう。

 特別傍聴席には、あらかじめ、なんだっけ、着席不可とか何か書いた紙または札を、その席に書記官が置く。

 

 それでだ、たとえば傍聴席20席の法廷だと、傍聴席はこうなっている。以下、数字に意味はない。

 1⃣ 2⃣ 3⃣ 4⃣ 5⃣   6⃣ 7⃣ 8⃣ 9⃣ 0⃣
 1⃣ 2⃣ 3⃣ 4⃣ 5⃣   6⃣ 7⃣ 8⃣ 9⃣ 0⃣

 一部の法廷は、前列左右、つまり検察官側と弁護人側の、バー(傍聴席の前の木の柵)の端っこに小さな紙が貼られていることがある。紙にはこう書かれている。

 この2席(A・B)は、証人・関係者等のある場合には、席を譲ってもらうことになりますので、ご了承下さい。

 A・Bの席はこうだ。

 A  B  3⃣ 4⃣ 5⃣   6⃣ 7⃣ 8⃣  B   A
 1⃣ 2⃣ 3⃣ 4⃣ 5⃣   6⃣ 7⃣ 8⃣ 9⃣ 0⃣

 満席の法廷へ3分前に家族等が来て、AまたはA・Bに10分前から座っていた傍聴人が退出、というシーンを私は1回か2回見たかな、定かじゃない。
 紙があっても、特別傍聴席の札を置いて席を確保する、そういうケースがほとんどかも。

 すべての20席の法廷にその紙が貼られているわけじゃない。
 ある書記官が貼り、はがさないまま移動(転勤)し、次の書記官は紙を意識してない、そんなこともあるかと。

 

 弁護人は、特別傍聴席を滅多に取らない。取る弁護人は少数派だ。

 東京地裁は傍聴人が非常に多く、ほとんどみんな刑事裁判を傍聴する。
 色情事件や、被告人が女性氏名の事件は大人気。早々と行列ができることがよくある。傍聴席数を超えることもよくある。

 ところが、、、

 開廷30分程前に弁護人と被告人の家族数人(うち1人は情状証人)が来て、そばの待合室へ。
 開廷10分前にドアの施錠が解かれ、傍聴人が雪崩れ込む。たちまち満席。
 開廷3分前、弁護人と被告人の家族数人が待合室を出て、法廷へ。

 家族は座れず、情状証人も座れない。立ち見は許されず、出ていくしかない。東京地裁のあるあるだ。

 

 弁護人は特別傍聴席をなぜ取らないのか。

 裁判は刑事より民事が圧倒的に多い。民事の代理人ばっかりやり、刑事の弁護人はやったことがない弁護士もいるという。
 民事の傍聴席は、何か特別な事件以外は、いつもがらがらだ。
 傍聴人が押し寄せ、家族や関係者が傍聴席に座れないことがあるあるだと、普通の弁護士は知らない、、、

2025年9月 8日 (月)

被告人を拘禁刑5月に処する。お~!

 2025年6月1日、拘禁刑がスタートした。 ←リンク先は法務省矯正局

 法務省から聞いたところによれば、犯行日が6月1日以降の被告人が拘禁刑に処され、それとはまた別に、刑務所内の拘禁刑の処遇は6月1日から始まるそうだ。

 

 シンプルな刑事事件は、検挙からだいたい2カ月程度で法廷へ出てくる。8月には相当数が出てきたはずだ。
 しかし8月は恐怖の夏休み! 私は週1程度しか裁判所へ行かなかった。

 

 そして9月5日、とうとう遭遇しました!

 東京地裁、「道路交通法違反」、新件(第1回公判)。
 被告人は非身柄、58歳男性、会社員。

 2025年6月14日の、シンプル極まる無免許運転だった。
 前科・前歴・違反歴は一切なし。昔は略式により罰金30万円で済んだ事件だ。
 いつ頃からだっけ、済まず公判廷へ出てきて執行猶予付き懲役刑に処されることが多くなった。全件ってことはなかろうと思うが、わからない。運用上の厳罰化、である。

 検察官がこう述べた。

検察官 「被告人を拘禁刑5月に処するを相当と思料します」

 お~! これまではこうだった。

検察官 「被告人を懲役5月に処するを相当と思料します」

 「懲役5月(ごげつ。以下同)」が「拘禁刑5月」になった。「刑」の1文字がくっついた。なぜ?
 その理由は刑法にある。以前の刑法はこうだった。太字は私。

(刑の種類)
第九条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

 それがこうなった

(刑の種類)
第九条 死刑、拘禁刑、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

 だから「拘禁刑5月」と言うんである。
 でも「罰金刑30万円に」とは言わない。なんか私はおケツがかゆい(笑)。

 

 シンプルな事件なので直ちに判決が言い渡された。

裁判官 「主文。被告人を拘禁刑5月に処する。この裁判が確定した日から2年間その刑の執行を猶予する」

 お~! 速度違反なら執行猶予2年は普通にあるが、無免許で2年は超珍しい。
 こういうところに感慨を覚えるタイプの、私は裁判傍聴マニアなのである。よしっ。

2025年5月17日 (土)

大麻は麻薬となり懲役5年→7年

 13時20分~13時30分、東京地裁の813号法廷(52席)で「偽計業務妨害、威力業務妨害」の判決。

 被告人が5分遅刻した。反対方向の電車に乗ったとかで。

 主文は懲役1年6月、執行猶予4年
 犯罪事実は、2023年8月のが1件、同年12月のが2件。

 「三菱UFJに爆破予告疑いで逮捕 ネット投稿、25歳男」と、なぜか報道日の明示を避けるかに共同通信。この事件だ。以下はその一部。

 逮捕容疑は昨年8月24日、警視庁ホームページ(HP)のお問い合わせフォームに、東京都内のゲーム関連会社を名指しし「同時爆破テロを実施させていただくナリ」と投稿。同12月6日には三菱UFJ銀行のHPに「我々恒心教は三菱UFJ銀行本社を爆破する」と書き込み、警視庁や同銀行の業務を妨害した疑い。

 恒心教。カルト?
 「「恒心教」の元大学院生に懲役3年の有罪判決 爆破予告など繰り返す」と昨年6月13日朝日新聞。以下はその一部。

恒心教は、特定のネット掲示板で弁護士らへの中傷を繰り返す人たちの行為を指す言葉。

 なんだそれ~。

 

 言渡しが終わったのが13時31分。
 13時30分から別の法廷(20席)で傍聴したいのがあったが、もうだめ。どうしよう。

 続けて813号法廷で「麻薬及び向精神薬取締法違反」の新件があった。おお、と思って傍聴した。

 

 被告人(身柄、拘置所)は大柄な35歳。「暴力団」の所属らしい。
 今年2月の、「麻薬である大麻」39.859gの所持だった。麻薬である大麻!

 起訴状朗読の最後、罰条の部分、「66条1項」とばっちりメモ、しゃっとアンダーラインを引きましたぞ!
 以下は麻薬及び向精神薬取締法の第66条だ。

第六十六条 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第六十九条第四号若しくは第五号又は第七十条第五号に規定する違反行為をした者を除く。)は、七年以下の懲役に処する。
 営利の目的で前項の罪を犯したときは、当該罪を犯した者は、一年以上十年以下の懲役に処し、又は情状により一年以上十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
 前二項の未遂罪は、罰する。

 

 第1項には原則として項番号をつけない。詳しい理由は『法令作成の常識』(林修三著、日本評論社セミナー叢書)に。

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 第1項の丸カッコ内の第69条第4号とかいうのは、麻薬営業者、麻薬輸入業者、麻薬製造業者、麻薬製剤業者なんかの規定であり、一般人には関係ない。

 大麻も麻薬と定義されている。大麻は「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬」に当たる。よって大麻の所持は、麻薬及び向精神薬取締法により7年以下の懲役なのだ。

 

 以前の大麻取締法では、こうだった。

第二十四条の二 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。

 2024年12月12日、所持の罰則は麻薬及び向精神薬取締法のほうに取り込まれ、7年以下の懲役とされた。
 そして、大麻取締法は「大麻草の栽培の規制に関する法律」にかわり、所持の罰則はこうなった。

第二十四条の二 削除

 

 交通死傷事故は「業務上過失致死傷」から「自動車運転過失致死傷」になり「過失運転致死傷」になった。「強姦」は「強制性交等」になり「不同意性交等」になった。

 裁判官たちは次々に移動する。新井紅亜礼(くあら)さんは久しぶりに東京地裁へ戻ってきた。園原敏彦さんは今、東京簡裁に!

 昔は東京簡裁にあれほど多かったオービスの否認事件は、いつしか皆無となり、東京地裁へ稀(まれ)に出てくる程度となった。

 さまざま移り変わり、傍聴マニアだけが傍聴席に居続ける、楽しいよねえ(笑)。

 

 メモ:「東京地方裁判所刑事部の概況(令和3年12月期)」なるものを発見した。

 第5表「刑事訴訟事件新受人員の推移」が興味深い。
 1993年からぐいんぐいん増え、2004年をピークに、崖から落ちるように急減している。この異様なカーブは何なの。

 そういえば2004年5月21日、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が国会で可決成立した。
 裁判員法の成立へ向かって刑事裁判はぐいんぐいん増え、成立したら真っ逆さまに急減、偶然かなあ、、、

2024年6月15日 (土)

無期懲役にも未決算入はある

 報道タブーその1 刑事裁判の被告人は「被告」じゃない

 報道タブーその2 罰金判決で裁判官は必ず「換刑処分」も言い渡す

 はい、というわけでですね、今回は報道タブーのその3、「未決算入」についてです。

 

 逮捕され、判決までずっと勾留されている、ということがよくある。保釈されたけども保釈までの勾留が長かった、ということもある。
 そんな場合、判決は通常、たとえばこう言い渡される。

 

裁判官 「主文。被告人を懲役1年2月(にげつ)に処する。未決勾留日数中20日(にじゅうにち)をその刑に算入する」

 

 一審判決の場合、だいたい2カ月間は裁判に必要な期間ととらえ、それ以上の勾留分を刑期から引く、という扱いのようだ。

 長く争って長く勾留され、未決算入により懲役刑がチャラになる、もう服役を終えた扱いにする、ということもある。
 

 控訴審における未決勾留日数は、原判決破棄の場合や、検察控訴だった場合、全部算入(法定算入)となる。

 懲役の実刑判決を受け、量刑不当で控訴し、さらに100万円とか被害弁償し、しかし「原判決を破棄するまでには至らない」として控訴棄却、裁判長がこう述べることがある。

裁判長 「被害弁償の分は、未決算入を多めにとることで考慮しましたから」

 

 無期懲役でも未決算入はある。

 2016年1月に東京地裁立川支部で無期懲役の判決が言い渡された住居侵入、強姦、強姦致傷、強盗致傷、逮捕監禁、住居侵入(変更後の訴因 邸宅侵入)」、これ、未決算入は900日だった。

 「強姦致傷、強盗致傷」の部分が裁判員裁判対象事件であり、素人裁判員の負担をできる限り軽くするため、公開法廷での裁判が始まる前に必ず、密室で公判前整理手続きを重ね、主張も立証も削り整える。
 この事件の公判前整理手続きは、5年ほどかかったという。

 

 ただ、昔東京高裁の部総括判事氏から雑談として聞いたところによれば、本当に死刑に近い無期懲役判決の場合、未決算入をしないこともあるという。

 

 未決算入も報道タブーだ。なぜ?

 大手の報道業者さんが相手にする視聴者、読者は、傍聴マニアでは全くない。
 刑事と民事の区別がつかなくても、換刑や未決算入なんぞ知らなくても、ぜんぜん問題なく生活できる。

 そんな視聴者、読者に対し、めんどくさいことを伝えなくていい。伝えれば、視聴者、読者は離れることはあっても、視聴率や部数が増えることは絶対ない、そういう判断なのかなと私は想像する。
 その判断は、たぶん正しいと思う。

 

 一方、私の場合、なんちぅか、マイナー街道、裏街道、隙間物書き、ニッチ物書き、よくいえば分業だ(笑)。
 これでそこそこ成り立ってる、食えている、ありがたいことです。

2024年6月13日 (木)

罰金判決で裁判官は必ず「換刑処分」も言い渡す

 「被告人と被告」に続いて、刑事裁判に係るメディアタブーのコーナーです。

 

 罰金刑はこう言い渡される。

裁判官 「主文。被告人を罰金×万円に処する。その罰金を完納できないときは金×円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する」


 「その罰金を…」からの部分、聞いたことがない?
 いいえ、ぜーったい聞いてます!
 以下は刑法第18条、その第4項をよく見てください。太字は私。 

 

(労役場留置)
第十八条 罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
 科料を完納することができない者は、一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。
 罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、三年を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、六十日を超えることができない。
 罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。
 罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
 罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)とする。

 

 罰金刑(財産刑)を執行できないとき、労役場留置(自由刑)に換えて執行する。換刑処分という。
 この換刑処分を、裁判官は、刑法第18条第4項により、言い渡さなければならないのだ。

 労役場留置は自由刑の執行であり、1日5千円の労働ではない。
 暇つぶしでしかない軽作業で、ノルマなし、土日は休みで、休みの日も労役場留置の日数としてカウントされる。
 自由を奪う期間を、1日5千円で計算するのである。

 

 罰金額が数十万円の場合、換刑は1日5千円が普通だ。まれに、1万円のこともある。

 第18条の第1項が、罰金の労役場留置は1日以上2年以下と定めている。2年を超えることはできない。
 だから、罰金額が巨額だと1日当たりの金額が大きくなる。

 けど、罰金額を2年(730日)で割るってことではないんだね。

 たとえば覚醒剤6㎏を密輸した事件は、懲役12年、罰金600万円、換刑1日1万5千円だった。割り算すると約400日だ。
 マルチ商法の脱税事件は、懲役1年2月、罰金2200万円、換刑1日15万円だった。同、150日弱だ。

 

 逆に、というか、こんな言渡しもある。

裁判官 「主文。被告人を罰金×万円に処する。未決勾留日数中その1日を金×円に換算して、その罰金額に満つるまでの分をその刑に算入する」

 

 罰金はもう払い終わったことにする、という意味だ。労役作業なんかしてないのに。

 たとえば、車上生活者が免許更新できず無免許で捕まった、なんて場合、罰金の相場は30万円、どうせ払えないし、そもそも裁判所や検察庁からの郵便が届かない、じゃあ、逮捕・勾留しといて、満つるまで算入で処理しよう、とは裁判官も検察官も書記官も言わないけども、そういうことなのだね、という裁判がときどきある。

 満つるまで算入、私の好きな言葉だ。

 

 この換刑処分、メディア報道は絶対に触れない。タブーらしい。
 タブーのあるところデマあり。
 「交通違反の罰金を拒否ったら刑務所で日給5千円の強制労働」といったデマが匿名掲示板などにある。
 デマのせいと思われる殺人事件もかつてあった。

2024年6月10日 (月)

刑事裁判の被告人は「被告」じゃない

 毎度説明を添えるのに疲れ、ここでハッキリ記しておくことに。

 

 刑事裁判は、

   検察官 vs 被告人

 民事裁判は、

    原告 vs 被告

 である。

 ところがメディアは必ず、

   刑事裁判の被告人 = 被告

 と報じる。
 書き手が正しく被告人と書いても、メディアのほうで「被告」と変更することもある。

 被告=犯罪者と、すっかり定着している。

 

裁判官 「では被告は答弁書を陳述…」
被告  「被告だと? 俺を犯罪者扱いするのかあっ!」

 民事の裁判で被告が激怒したと、いつから語り継がれているんだろう、有名な話だ。

 「被告人を被告とする、あれはなんとかならんもんですかね(笑)」と、定年退官して間もない元裁判官氏から私は言われたことがある、裁判所の1階フロアで。私も困ってるんですよぉ。

 

 被告人を被告とするのは、単なる省略、短縮ではない。
 被告という語は、全く別の意味の言葉として、別にしっかりあるのだ。
 被告人を被告と報じるのは、明らかな誤りだ。誤報だ。

 

 しかし、改まる気配はまったくない。
 なんとなんと、被告人に対し「被告は…」とぽろり言っちゃう刑事裁判官もたまにいる。驚くよね。

 現時点での見込みとしては、日本が存在する限り、この誤報は永遠に続くだろう。
 世の中、そんなもんだよと私は思う。べつに絶望とかじゃない。事実を現実を、まずはありのままに見る、それが大事だと思う。

2022年10月30日 (日)

ひこくびと、べんごびと、ぼうちょうびと

 後出の第2687号で書いたんだけども、刑事裁判には独特の“読み方”がある。

 懲役3月=ちょうえきさんげつ
 懲役6月=ちょうえきろくげつ

 「さんかげつ」は期間だ。「さんげつ」は刑の重さ、そういうことかと私は解釈している。

 墨汁=ぼくじる
 17日=じゅうなのか ※これは犯行日

 独特である。だったら…。

 被告人=ひこくびと
 弁護人=べんごびと
 鑑定人=かんていびと
 通訳人=つうやくびと
 傍聴人=ぼうちょうびと

 証人=しょうげんびと

 

 いいんじゃね? などと妄想しつつメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」、10月は以下の9号を発行し終えた。

第2688号 白昼、女児の下着に手を入れた男、路上で女児に陰茎を見せた男
 タイトルの2件を含め6件を簡潔にレポート。裁判所へ日々どんな事件が次々と出てくるか…。

第2687号 こういうのがある、やらないか、警察に捕まらないから安心してくれ
 墨汁を「ぼくじる」と読み、6月17日を「ろくがつじゅうなのか」と読む。ならば被告人は「ひこくびと」?

 以下の2号は10月24日にお知らせした

第2686号 劇団主宰者が女優を脅迫、そしてトー横キッズのリンチ殺人…

第2685号 山手線の終電で女性にからむ酔漢に注意したら大けがを負わされ…

 以下の2号は10月18日にお知らせした

第2684号 リモートワークの父親が1歳半の子を脳死状態に。いったいなぜ?
第2683号 破棄自判で逆転執行猶予、そもそも原判決は重すぎたって!

 以下の3号は10月11日にお知らせした

第2682号 傷害事件の判決に出頭せず逃げ、2年後に女性を殴ってまた逃げ
第2681号 可搬式オービスLSM-300の裁判、無実でも有罪にできる論法とは
第2680号 犯行動機は陰茎の手術だった。結果に不満、何年も痛みが続き…

 

 旅人は「たびびと」とは読まない。こんなふうに読む。

「たびにんさん、あんた、あの垰(とうげ)へ、いきなさるかね、やめといたほうがええ」